一人では怖いんだよね。

仕事が終わりフラットに帰るには、地下鉄を使う。
最寄のアールズコートの駅は出口が二つ。
1つは正面出口。
出てすぐTESCOがあるから、買い物をしたいときにはこちら。
帰り道も明るい道で人通りも多い。
早く帰りたいときや、何も用事がないときは
裏出口・・・国際展示場があるほうから出て帰る。
ホームからちょっと狭い通路を通るけれど、10時くらいまでなら人も多い。
でもそれを過ぎるとさすがに、人影はまばらだ。


ある時ふと気がついた。
裏から出て信号待ちをしてると、気圧が変わる感じ。
誰かが後ろに立ってる。
あ?って思ったけど、振り向く気にはなれない。
信号を渡り。展示場を横を通る。


催し物があるときは、遅くまで車が入り、
荷物の運搬などあるので、まだなんとなく安心。
でもそれがない時は、鎖をまたいで入ってゆく。
非常灯が点いているだけ。


後ろをさっきの気配がまだ着いて来る。
カツ。カツ。カツ・・・
パンプスはいてる。女性なんだ。
何となくホッとする。さすがに一人で歩くより心強い。


展示場横を抜け広いエントランス前を通り、イビス通りに戻る。
信号をを渡ったところで、気配がなくなる。
ココからは明るいし、フラットは目の前。
早くシャワーを浴びて・・あぁ忘れずにmailを確認しよう。



アールズコート駅裏口の信号で、その後、何度もその気配を感じたけど
それは決まって催し物がない日。
私にしたらそれは心強いから、今度声を掛けてみようそう思っていた。


その日もその気配を感じながら、なぜか声をかけるのをためらっていた。
へたくそな英語が通じなかったら、変な人って思われるし・・・
第一なんて声をかけるの?
「いつも遅くまでお仕事ですね」・・って?
そんなの大きなお世話だし・・・
あぁもうすぐ気配が消える。
向こうに曲がっちゃうんだよなぁ。



そう思った通りの向こう。
今まではなぜか気にしたことがない塀の向こう。
彼女の気配が消えるその場所の向こう。。。


今朝、何気なくみたら集合墓地だったんだね。
高い塀に囲まれていて、今まで気がつかなかった。
入れ物の無いあなたも、やっぱり一人は怖いの?
それとも。。。守ってくれてたの?


今日も裏出口から・・・彼女と一緒に帰ろう。
でも、信号で必ず分かれよう。
私は、まだあなたと一緒に
向こう側に行くつもりはないから。

その時間まで


今日、呼び出したのは、はっきりと自分の気持ちを言うため。
だいたい環境も違えば、考え方だって違う。
ひとつの問題に対して、意見が食い違うのは当たり前の話。
それでもあえて自分の考えを伝えようと思ったのは、
私を信頼してくれていると感じたから。


人なんて本来あてにならないもの。
相談事や悩み事もしょせん他人事。
それでも、そういうことをひっくるめて
どうよ?って相談する事は、それなりに勇気がいる。
全てを話さなければ的確な意見はもらえない。
でも、そのためには知らなくていい事まで話さなければならない。


そんなことを、一言『ウザイ』で片付けてしまえばそれまでなのに
その経緯をきちんと伝えてくれた。
こんな話をすれば、どう思うだろう?迷惑だろうな?
そんな風に思ってしまったらそれで途切れてしまう。


私がここで、彼女と待ち合わせしたのは
小さな店の片隅で、うだうだと話をしていても
きっと気持ちがすっきりしないと思ったから。
悩みなんて考え方1つでどうにも変わってゆくと
そう思ったら、夕暮れて行くこのデッキのテーブルが
丁度自分の気持ちを伝えるのにぴったりだと思ったから。


悩まない人生なんてないでしょ。
傷ついたり苦しかったりするけどさ
私たちは明日も生きて行かなくちゃならない。
結構忙しいのよね。
だったらその悩みは。どこかで区切りをつけて
この際だから捨ててしまおう。
色々考えたし、痛い思いもしたし。
もう十分でしょ。
明日まで持ち越さないことをココで決めよう!

約束の時間になるまで、そんなことを考えている。
もうすぐ夕焼けの時刻。





そう彼女に話しながら、私も1つココで悩みを捨ててゆこう。